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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

主税さん。卒業したら、その日から、(私も掏摸かい、見て頂戴。)と、貴下の二階に居て讐を取ってやりたかったに、残念だわねえ。」

と擦寄って、

「地方へ行かない工夫はないの?」と忘れたように、肩に凭れて、胸へ縋ったお妙の手を、上へ頂くがごとくに取って、主税は思わず、唇を指環に接けた。

「忘れません。私は死んでも鬼になって。」

君の影身に附添わん、と青葉をさらさらと鳴らしたのである。

巣立の鷹

六十

「おっと、ここ、ここ、飯田町の先生、こっちだ、こっちだ、はははは。」

十二時近い新橋停車場の、まばらな、陰気な構内も、冴返る高調子で、主税を呼懸けたのは、め組の惣助。

手荷物はすっかり、このいさみが預って、先へ来て待合わせたものと見える。大な支那革鞄を横倒しにして、えいこらさと腰を懸けた。重荷に小附の折革鞄、慾張って挟んだ書物の、背のクロオスの文字が、伯林の、星の光はかくぞとて、きらきら異彩を放つのを、瓢箪式に膝に引着け、あの右角の、三等待合の入口を、叱られぬだけに塞いで、樹下石上の身の構え、電燈の花見る面色、九分九厘に飲酒たり矣。

あれでは、我慢が仕切れまい、真砂町の井筒の許で、青葉落ち、枝裂けて、お嬢と分れて来る途中、どこで飲んだか、主税も陶然たるもので、かっと二等待合室を、入口から帽子を突込ん