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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

で覗く処を、め組は渠のいわゆる(こっち。)から呼んだので。これが一言でブーンと響くほど聞えたのであるから、その大音や思うべし。

「やあ、待たせたなあ。」

主税も、こうなると元気なものなり。

ドッコイショ、と荷物は置棄てに立って来て、

「待たせたぜ、先生、私あ九時から来ていた。」

「退屈したろう、気の毒だったい。」

「うんや、何。」

とニヤリとして、半纏の腹を開けると、腹掛へ斜っかいに、正宗の四合罎、ト内証で見せて、

「これだ、訳やねえ、退屈をするもんか。時々喇叭を極めちゃあね、」

と向顱巻の首を掉って、

「切符の売下口を見物でさ。ははは、別嬪さんの、お前さん、手ばかりが、あすこで、真白にこうちらつく工合は、何の事あねえ、さしがねで蝶々を使うか、活動写真の花火と云うもんだ、見物だね。難有え。はははは。」

「馬鹿だな、何だと思う、お役人だよ、怪しからん。」

と苦笑いをして躾めながら、

「家はすっかり片附いたかい、大変だったろう。」

「戦だ、まるで戦だね。だが、何だ、帳場の親方も来りゃ、挽子も手伝って、燈の点く前にゃ縁の下の洋燈の破れまで掃出した。何をどうして可いんだか、お前さん、みんな根こそぎ敲き売れ、と云うけれど、そうは行かねえやね。