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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

まあ、御覧なさい、と云う折から窓を覗いた。

この富士山だって、東京の人がまるっきり知らないと、こんなに名高くはなりますまい。自分は田舎で埋木のような心地で心細くってならない処。夫が旅行で多日留守、この時こそと思っても、あとを預っている主婦ならなおの事、実家の手前も、旅をかけては出憎いから、そこで、盲目の娘をかこつけに、籠を抜けた。親鳥も、とりめにでもならなければ可い、小児の罰が当りましょう、と言って、夫人は快活に吻々と笑う。

この談話は、主税が立続けに巻煙草を燻らす間に、食堂と客室とに挟まった、その幅狭な休憩室に、差向いでされたので。

椅子と椅子と間が真に短いから、袖と袖と、むかい合って接するほどで、裳は長く足袋に落ちても、腰の高い、雪踏の尖は爪立つばかり。汽車の動揺みに留南奇が散って、友染の花の乱るるのを、夫人は幾度も引かさね、引かさねするのであった。

主税はその盲目の娘と云うのを見た。それは、食堂からここへ入ると、突然客室の戸を開けようとして男の児が硝子扉に手をかけた時であった。――銀杏返しに結った、三十四五の、実直らしい、小綺麗な年増が、ちょうど腰掛けの端に居て、直ぐにそこから、扉を開けて、小児を迎え入れたので、さては乳母よ、と見ると、もう一人、被布を着た女の子の、キチンと坐って、この陽気に、袖口