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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

へ手を引込めて、首を萎めて、ぐったりして、その年増の膝に凭かかっていたのがあって、病気らしい、と思ったのが、すなわち話の、目の病い娘なのであった。

乳母の目からは、奥に引込んで、夫人の姿は見えないが、自分は居ながら、硝子越に彼方から見透くのを、主税は何か憚かって、ちょいちょい気にしては目遣いをしたようだったが、その風を見ても分る、優しい、深切らしい乳母は、太くお主の盲目なのに同情したために、自然から気が映ってなったらしく、女の児と同一ように目を瞑って、男の児に何かものを言いかけるにも、なお深く差俯向いて、いささかも室の外を窺う気色は無かったのである。

かくて彼一句、これ一句、遠慮なく、やがて静岡に着くまで続けられた。汽車には太く倦じた体で、夫人は腕を仰向けに窓に投げて、がっくり鬢を枕するごとく、果は腰帯の弛んだのさえ、引繕う元気も無くなって見えたが、鈴のような目は活々と、白い手首に瞳大きく、主税の顔を瞻って、物打語るに疲れなかった。

草深辺

六

県庁、警察署、師範、中学、新聞社、丸の内をさして朝ごとに出勤するその道その道の紳士の、最も遅刻する人物ももう出払って、――初夜の九時十時のように、朝の九時十時頃も、一時は魔の所有に寂寞する、草深町は静岡の侍小路を、カラカラと挽いて通る、一台、