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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「そんな邪険な撫着けようがあるもんですか、私が分けて上げますからお待ちなさい。」

と云うのを、聞かない振でさっさと引込もうとしたので、

「あれ、お待ちなさい」と、下〆をしたばかりで、衝と寄って、ブラッシを引奪ると、窓掛をさらさらと引いて、端近で、綺麗に分けてやって、前へ廻って覗き込むように瞳をためて顔を見た。

胸の血汐の通うのが、波打って、風に戦いで見ゆるばかり、撓まぬ膚の未開紅、この意気なれば二十六でも、紅の色は褪せぬ。

境内の桜の樹蔭に、静々、夫人の裳が留まると、早瀬が傍から向うを見て、

「茶店があります、一休みして参りましょう。」

「あすこへですか。」

「お誂え通り、皺くちゃな赤毛布が敷いてあって、水々しい婆さんが居ますね、お茶を飲んで行きましょうよ。」

と謹んで色には出ぬが、午飯に一銚子賜ったそうで、早瀬は怪しからず可い機嫌。

「咽喉が渇いて?」

「ひりつくようです。」

「では……」

茶店の婆さんというのが、式のごとく古ぼけて、ごほん、と咳くのが聞えるから、夫人は余り気が進まぬらしかったが、二三人子守女に、きょろきょろ見られながら、ずッと入る。

「お掛けなさいまし。