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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

ごほごほと頷き頷き、咳入りつつ、婆さんが持って来た甘酒を、早瀬が取ろうとするのを、取らせまいと、無言で、はたと手で払った。この時、夫人は手巾で口を圧えながら、甘酒の茶碗を、衝と傍へ奪ったのである。

十二

「芭蕉の葉煎じたを立続けて飲ましって、効験の無い事はあるまいが、疾く快うなろうと思いなさる慾で、焦らっしゃるに因ってなおようない、気長に養生さっしゃるが何より薬じゃ。なあ、主、気の持ちように依るぞいの。」

と婆さんは渠を慰めるような、自分も勢の無いような事を云う。

病人は、苦を訴うるほどの元気も持たぬ風で、目で頷き、肩で息をし、息をして、

「この頃は病気と張合う勇もないで、どうなとしてくれ、もう投身じゃ。人に由っては大蒜が可え、と云うだがな。大蒜は肺の薬になるげじゃけれども、私はこう見えても癆咳とは思わん、風邪のこじれじゃに因って、熱さえ除れれば、とやっぱり芭蕉じゃ。」

愚痴のあわれや、繰返して、杖に縋った手を置替え、

「煎じて飲むはまだるこいで、早や、根からかぶりつきたいように思うがい。」

と切なそうに顔を獅噛める。

「焦らっしゃる事よ、苛れてはようない、ようないぞの。