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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
そこへ、しばらくして、郵便――だった。
すらすらと読果てた。手紙を巻戻しながら顔を振上げると、乱れたままの後れ毛を、煩さそうに掻上げて、
「ついぞ思出しもしなかった、乳なんか飲まれて、さんざ膏を絞られたわ。」
と急いで衣紋を繕って、
「さあ、お酌をしましょう。」
瓶を上げると、重い。
「まあ、ちっとも召喫らないのね。お酌がなくっては不可いの、ちょいと贅沢だわ。ほほほほ、家も極まったし、一人で世帯を持った時どうするのよ。」
「沢山頂きました、こんなに御厄介になっては、実に済みません……もう、徐々失礼しましょう。」
と恐しく真面目に云う。
「いいえ、返さない。この間から、お泊んなさいお泊んなさいと云っても、貴下が悪いと云うし、私も遠慮したけれど、可いわ、もう泊っても。今ね、御覧なさい、牛込に居る母様から手紙が来て、早瀬さんが静岡へお出なすって、幸いお知己になったのなら、精一杯御馳走なさい、と云って来たの。嬉しいわ、私。
あのね、実はこれは返事なんです。汽車の中でお目にかかった事から、都合があってこちらで塾をお開きなさるに就いて、ちっとも土地の様子を御存じじゃない、と云うから、私がお世話をしてなんて、そこはね、可いように手紙を出したの、その返事、」