轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

早瀬は起上って、棚の残燈を取って、縁へ出た。次の書斎を抜けるとまた北向きの縁で、その突当りに、便所があるのだが、夫人が寝たから、大廻りに玄関へ出て、鞠子の婢の寝た裙を通って、板戸を開けて、台所の片隅の扉から出て、小用を達して、手を洗って、手拭を持つと、夫人が湯で使ったのを掛けたらしい、冷く手に触って、ほんのり白粉の香がする。

十九

寝室へ戻って、何か思切ったような意気込で、早瀬は勢よく枕して目を閉じたが、枕許の香は、包を開けても見ず、手拭の移香でもない。活々した、何の花か、その薫の影はないが、透通って、きらきら、露を揺って、幽な波を描いて恋を囁くかと思われる一種微妙な匂が有って、掻巻の袖を辿って来て、和かに面を撫でる。

それを掻払うごとく、目の上を両手で無慚に引擦ると、ものの香はぱっと枕に遁げて、縁側の障子の隅へ、音も無く潜んだらしかったが、また……有りもしない風を伝って、引返して、今度は軽く胸に乗る。

寝返りを打てば、袖の煽にふっと払われて、やがて次の間と隔ての、襖の際に籠った気勢、原の花片に香が戻って、匂は一処に集ったか、薫が一汐高くなった。