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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

どこを見てもがらんとして、間狭な内には結句さっぱりして可さそうなが、お妙は目を外らす壁張りの絵も無いので、しきりに袂を爪繰って、

「可いのよ、小母さん、髪結さんの許だから、極りが悪いからそう云って来たけれど、髪なんぞ結わなくったって構わなくってよ。ちっとも私、結いたくはないの、」

と投出したように云って、

「早瀬さんの、あの、主税さんの奥さんに、私、お目にかかれなくって?」

「姉さん、」

ト、障子の内から。

「あい、」と小芳が立構えで、縁へ振向いてそなたを見込むと、

「私、そこへ行っても可いかい?」

小芳が急いで縁づたいで、障子を向うへ押しながら、膝を敷居越に枕許。

枕についた肩細く、半ば掻巻を藻脱けた姿の、空蝉のあわれな胸を、痩せた手でしっかりと、浴衣に襲ねた寝衣の襟の、はだかったのを切なそうに掴みながら、銀杏返しの鬢の崩れを、引結えた頭重げに、透通るように色の白い、鼻筋の通った顔を、がっくりと肩につけて、吻と今呼吸をしたのはお蔦である。

二十二

お蔦は急に起上った身体のあがきで、寝床に添った押入の暗い方へ顔の向いたを、こなたへ見返すさえ術なそうであった。