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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
とお蔦が莞爾。
「驚きましたねえ。」
と立つ。
「御飯も一所よ。」
「あいよ、」
と框を下りる時、褄を取りそうにして、振向いた目のふちが腫ぼったく、小芳は胸を抱いて、格子をがらがら。
「お嬢さん、」
とお蔦が懐しそうに、
「もともと、そういう約束で別れたんですけれど、私の方へも丸一年……ちっとも便がないんですよ。
人が教えてくれましてね、新聞を見ると、すっかり土地の様子が知れるッて言いますから、去年の七月から静岡の民友新聞と云うのを取りましてね、朝起きると直ぐ覗いて、もう見落しはしなかろうか、と隙さえあれば、広告まで読みますんですが、ちっとも早瀬さんの事を書いてあったことはありませんから、どうしておいでだか分りません。
この頃じゃ落胆して、勢も張合も無いんですけれども、もしやにひかされては見ています。
たった一度、早瀬さんのことを書いてあったのがござんしてね、切抜いて紙入の中へ入れてありますから、今、お目に掛けますよ。」
二十六
お蔦は蓐に居直って、押入の戸を右に開ける、と上も下も仏壇で、一ツは当家の。自分でお蔦が守をするのは同居だけに下に在る。