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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
驚いたのはお源坊、ぼうとなって、ただくるくると働く目に、一目輝くと見たばかりで、意気地なくぺたぺたと坐って、偏に恐入ってお辞儀をする。
「御免なさいよ。」
と優い声、はッと花降る留南奇の薫に、お源は恍惚として顔を上げると、帯も、袂も、衣紋も、扱帯も、花いろいろの立姿。まあ! 紫と、水浅黄と、白と紅咲き重なった、矢車草を片袖に、月夜に孔雀を見るような。
め組が刎返した流汁の溝溜もこれがために水澄んで、霞をかけたる蒼空が、底美しく映るばかり。先祖が乙姫に恋歌して、かかる処に流された、蛙の児よ、いでや、柳の袂に似た、君の袖に縋れかし。
妙子は、有名な独逸文学者、なにがし大学の教授、文学士酒井俊蔵の愛娘である。
父様は、この家の主人、早瀬主税には、先生で大恩人、且つ御主に当る。さればこそ、嬢様と聞くと斉しく、朝から台所で冷酒のぐい煽り、魚屋と茶碗を合わせた、その挙動魔のごときが、立処に影を潜めた。
まだそれよりも内証なのは、引窓を閉めたため、勝手の暗い……その……誰だか。
十一
妙子の手は、矢車の花の色に際立って、温柔な葉の中に、枝をちょいと持替えながら、