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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

」

夫人はこれを戯のように聞いて、早瀬の言を露も真とは思わぬ様子で、

「戯談おっしゃいよ! 嘘にも、そんな事を云って、事が起ったら子供たちはどうするの?」

と皆まで言わせず、事も無げに答えた。

「無論、島山さんの心まかせで、一所に連れて出ろと、言われりゃ連れて出る。置いて行けとなら、置いて……」

「暢気で怒る事も出来はしない。身に染みて下さいな、ね……」

「何が暢気だろう、このくらい暢気でない事はない。小使と私と二人口でさえ、今の月謝の収入じゃ苦しい処へ、貴女方親子を背負い込むんだ。静岡は六升代でも痩腕にゃ堪えまさ。」

余の事と、夫人は凝と瞻って、

「私がこんなに苦労をするのに、ほんとに貴下は不実だわ。」

「いざと云う時、貴女を棄てて逐電でもすりゃ不実でしょう。胴を据えて、覚悟を極めて、あくまで島山さんが疑って、重ねて四ツにするんなら、先へ真二ツになろうと云うのに、何が不実です。私は実は何にも知らんが、夫人が御勝手に遊びにおいでなさるんだなんて言いはしない。」

「そう云ってしまっては、一も二も無いけれど。」

「また、一も二も無いんですから、」

「だって世の中は、そう貴下の云うようには参りませんもの。