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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

後にその筋から御褒美が出ます。養老の滝でも何でも、昔から孝行な人物の親は、大概酒を飲みますものです。貴女を(お酌さん。)なぞと云う奴は、親のために焼芋を調え、牡丹餅を買い……お茶番の孝女だ。」

と大に擽って笑うと、妙子は怨めしそうな目で、可愛らしく見たばかり。

「私は、もう帰ります。」

「御串戯をおっしゃっては不可ません。これからその焼芋だの、牡丹餅だの。」

「ええ、私はお茶番の孝女ですから。」

「まあ、御褒美を差上げましょう。」

と主税が引寄せる茶道具の、そこらを視めて、

「お客様があったのね。お邪魔をしたのじゃありませんか。」

「いいえ、もう帰った後です。」

「厭な人ね?」

と唐突に澄まして云う。

「見たんですか。」

「見やしませんけれど、御覧なさいな。お茶台に茶碗が伏っているじゃありませんか、お茶台に茶碗を伏せる人は、貴下嫌だもの、父様も。」

「天晴れ御鑑定、本阿弥でいらっしゃる。」と急須子をあける。

「誰方なの?」

「御存じのない者です。河野と云う私の友達……来ていたのはその母親ですよ。」

「河野ね? 主税さん。」と妙子はふっくりした前髪で打傾き、

「学士の方じゃなくって、」