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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

汽車の弁当でも試たまえ、東海道一番だよ。」

主税はどこまでも髯のある坊ちゃんにして、逆らわない気で、

「いや、何か、手前どもで、め組のものを召食って、大層御意に叶ったから、是非寄越してくれと誰かが仰有るもんだから取あえず差立てたんだ。御家風を存じないでもなかったけれども、承知の上で、君がたってと云ったから、」

「僕は構わん。僕は構わんが、あの調子だもの、祖母さんや妹たちはもとよりだ。故郷から連れて来ている下女さえ吃驚したよ。母様は、僕を呼びつけて談じたです。あんなものに朋輩呼ばわりをされるような悪い事をしたか。そこいらの芸妓にゃ、魚屋だの、蒲鉾屋の職人、蕎麦屋の出前持の客が有ると云うから、お前、どこぞで一座でもおしだろう、とね、叱られたです。

僕は何、あれは通りもんです。早瀬の許へ行っても、同一く、今日は旨えものを食わせてやろう。居るか、と云った調子です、と云ったら、母様が云うにゃ、当前だ、早瀬じゃ、細君……」

と云いかけて、ぐっと支えたが、ニヤリとして、

「君、僕は饒舌りやしないよ。僕は決して饒舌らんさ。秘密で居ることを知ってるから、君の不利益になるような事は云わないがね、妹たちが知ってるんだ。