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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「しかし縁起だ、こりゃ一本貰って行くよ。妙子が御持参の花だから、」

「…………」

「君がどうと云う事も無いのなら、一本二本惜むにゃ当るまい、こんなに沢山あるものを、」

「…………」

「失敬、」

あわや抜き出そうとする。と床しい人香が、はっと襲って、

「不可ませんよ。」と半纏の襟を扱きながら、お蔦が襖から、すっと出て、英吉の肩へ手を載せると、蹌踉けるように振向く処を、入違いに床の間を背負って、花を庇って膝をついて、

「厭ですよ、私が活けたのが台なしになります。」

と嫣然として一笑する。

「だって、だって君、突込んであるんじゃないか、池の坊も遠州もありゃしない。ちっとぐらい抜いたって、あえてお手前が崩れるというでもないよ。」

とさすがに手を控えて、例の衣兜へ突込んだが、お蔦の目前を、(子を捉ろ、子捉ろ。)の体で、靴足袋で、どたばた、どたばた。

「はい、これは柳橋流と云うんです。柳のように房々活けてありましょう、ちゃんと流儀があるじゃありませんか。」

「嘘を吐きたまえ、まあ可いから、僕が惚込んだ花だから。」

主税は火鉢をぐっと手許へ。お蔦はすらりと立って、

「だってもう主のある花ですもの。