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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

ざっと半日居たけれども、飯時を避けるなぞは、さすがに馴れたものである。

二十五

客が来れば姿を隠すお蔦が内に居るほどで、道学先生と太刀打して、議論に勝てよう道理が無い。主税の意気ずくで言うことは、ただ礼之進の歯ですすられるのみであったが、厭なものは厭だ、と城を枕に討死をする態度で、少々自棄気味の、酒井先生へ紹介は断然、お断り。

そこを一つお考え直されて、と言を残して帰った後で、アバ大人が媒妁ではなおの事。とお妙の顔が蒼くなって殺されでもするように、酒も飲まないで屈託をする、とお蔦はお蔦で、かくまってあった姫君を、鐘を合図に首討って渡せ、と懸合われたほどの驚き加減。可愛い夫が可惜がる大切なお主の娘、ならば身替りにも、と云う逆上せ方。すべてが浄瑠璃の三の切を手本だが、憎くはない。

さあ、貴郎、そうしていらっしゃる処ではありません、早く真砂町へおいでなすって、先生が何なら奥様まで、あんな許へは御相談なさいませんように、お頼みなさらなくッちゃ不可ません。ちょいと、羽織を着換えて、と箪笥をがたりと引いて、アア、しばらく御無沙汰なすった、明日め組が参りますから、何ぞお土産をお持ちなさいまし、先生はさっぱりしたものがお好きだ、と云うし、彼奴が片思いになるように鮑がちょうど可い、と他愛もない。