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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

お蔦さえ、憂慮うよりむしろ口惜がって、ヤイヤイ騒ぐから、主税の、とつおいつは一通りではない。何は措ても、余所ながら真砂町の様子を、と思うと、元来お蔦あるために、何となく疵持足、思いなしで敷居が高い。

で何となく遠のいて、ようよう二日前に、久しぶりで御機嫌窺いに出た処、悪くすると、もう礼之進が出向いて、縁談が始まっていそうな中へ、急に足近くは我ながら気が咎める。

愚図々々すれば、貴郎例に似合わない、きりきりなさいなね……とお蔦が歯痒がる。

勇を鼓して出掛けた日が、先生は、来客があって、お話中。玄関の書生が取次ぐ、と(この次、来い。)は、ぎょっとした。さりとて曲がない。内証のお蔦の事、露顕にでも及んだかと、まさかとは思うが気怯れがして、奥方にもちょいと挨拶をしたばかり。その挨拶を受けらるる時の奥方が、端然として針仕事の、気高い、奥床しい、懐い姿を見るにつけても、お蔦に思較べて、いよいよ後暗さに、あとねだりをなさらないなら、久しぶりですから一銚子、と莞爾して仰せある、優しい顔が、眩いように後退して、いずれまた、と逃出すがごとく帰りしなに、お客は誰?……とそっと玄関の書生に当って見ると、坂田礼之進、噫、止ぬる哉。