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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

しばらくは早瀬の家内、火の消えたるごとしで、憂慮しさの余り、思切って、更に真砂町へ伺ったのが、すなわち薬師の縁日であったのである。

ちと、恐怖の形で、先ず玄関を覗いて、書生が燈下に読書するのを見て、またお邪魔に、と頭から遠慮をして、さて、先生は、と尋ねると、前刻御外出。奥様は、と云うと、少々御風邪の気味。それでは、お見舞に、と奥に入ろうとする縁側で、女中が、唯今すやすやと御寐になっていらっしゃいます、と云う。

悄々玄関へ戻って、お嬢さんは、と取って置きの頼みの綱を引いて見ると、これは、以前奉公していた女中で、四ッ谷の方へ縁附いたのが、一年ぶりで無沙汰見舞に来て、一晩御厄介になる筈で、お夜食が済むと、奥方の仰に因り、お嬢さんのお伴をして、薬師の縁日へ出たのであった。

それでは私も通の方を、いずれ後刻、とこれを機に。出しなにまた念のために、その後、坂田と云うのは来ませんか、と聞くと、アバ大人ですか、と書生は早や渾名を覚えた。ははは、来ましたよ。今日の午後。

男金女土

二十八

主税は、礼之進が早くも二度の魁を働いたのに、少なからず機先を制せられたのと――かてて加えてお蔦の一件が暴露たために、先生が太く感情を損ねられて、わざとにもそうされるか、と思われないでもない――玄関の畳が冷く堅いよう