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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
「一体高過ぎる、無法だよ。」
と主税はその言い種が憎いから、ますます買う気は出なくなる。
「でげすがな、これから切通しの坂を一ツお下りになりゃ、五両と十両は飛ぶんでげしょう。そこでもって、へへへ、相性は聞きたし年紀は秘したしなんて寸法だ。ええ、旦那、三世相は御祝儀にお求め下さいな。」
いよいよむっとして、
「要らない。」と、また立とうとする。
「じゃもう五銭、五百、たった五銭。」
片手を開いて、肱で肩癖の手つきになり、ばらばらと主税の目前へ揉み立てる。
憤然として衝と立った。主税の肩越しにきらりと飛んで、かんてらの燻った明を切って玉のごとく、古本の上に異彩を放った銀貨があった。
同時に、
「要るものなら買って置け。」
とのある、凜とした声がかかった。
主税は思わず身を窘めた。帽子を払って、は、と手を下げて、
「先生。」
露店の亭主は這出して、慌てて古道具の中へ手を支いて、片手で銀貨を圧えながら、きょとんと見上げる。
茶の中折帽を無造作に、黒地に茶の千筋、平お召の一枚小袖。黒斜子に丁子巴の三つ紋の羽織、紺の無地献上博多の帯腰すっきりと、片手を懐に、裄短な袖を投げた風采は、丈高く痩せぎすな肌に粋である。