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よめとりにだいき
嫁取り二代記
山本 周五郎
「婦人倶楽部」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,763 字 · 23 页
三
「む――っ」
勘兵衛はいきなり眼鏡をりとった、そして両手で頭をひっ掴みながらそこへ跼みこんでしまった。
三
牧屋勘兵衛は、備中福山の城主阿部伊勢守の国家老で七百石、頑固一徹なところから家中の者に、
「牧屋の頑兵衛どの」
と綽名されているが、一面また実に分りの良いところがあって、ことに若い連中には好い人気を持っていた。
数年前、妻のお信に先立たれ、また子がなかったので、江戸邸に留守居役を勤めている弟、牧屋伝兵衛の二男直次郎を引取り、行く行くはこれに跡目を継がせようと云うので、ずっと手許で育ててきた。――ところでこの直次郎がひと通りの青年でなかった、色白の美男で武芸もでき、学問にも秀でているが、なにしろ眼から鼻へ抜けるような性質で、――十五万石をぐわんと圧えている勘兵衛が、直次郎のためにはいつも見事な背負い投げを喰わされる。
「今度こそはごまかされんぞ」
と思うがそのたびにいけなかった。
そして、――このところしばらく痛事がないと思っていたとたんに、又しても「お笛引取り」と云う大罠に引懸ったのである。しかも……芸妓あがりの女を、嫁に娶ってくれというのだ。
「――何と云う面の皮の厚い奴だ」