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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

迚もやる気になりません」

「それだから私立へ逃げるんだね?」

「違います。嫌いな学科が試験に出るからです」

「何うもお前は奮発心がなくていけない。楽な方へばかり行きたがる」

「いゝえ、お父さん、早稲田は田舎の高等学校よりもむずかしいんです」

「そんなことはないよ、私立だもの」

「いゝえ、お父さんはこの頃の学校のことは些っとも御存知ないんです」

と二郎君はテキパキはしている。しかしお父さんの意向に頓着しない。

「兎に角、俺は自分が帝大だから、子供も帝大へやりたい」

「…………」

「お前は何うしても文科をやりたいのかい?」

「はい」

「それじゃ文科をやりなさい」

「はあ。有難うございます」

「しかし帝大の文科が好い。一生の損徳の岐れ目だから、早稲田の方はもう一遍考え直して御覧。正月になってから返辞をしなさい」

「はあ」

「お前は石に噛りついてもという精神がないからいけない」

「…………」

「お父さんなんか書生時代には随分やったものだよ」

「…………」

「境遇が好過ぎるからだろう。お前に限ったことではないが、何うもこの頃の学生は堅忍不抜の精神に乏しい。大きな弱点だよ」

「…………」

「お前は螢雪の功ということを知っているかい?」