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よめとりむことり
嫁取婿取
佐々木 邦
「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页
「はゝあ」
「何うぞ御覧下さい」
と俊一君は平塚君から来た手紙を封筒のまゝ渡した。
「来たんですか?」
と斎藤さんが訊いた。
「はあ。御心配をかけました」
「しかし丁度好い都合でしたな」
「この手紙丈けには手品もなかろう。お前の留守中に着いたんだから」
と山下さんは一寸皮肉を言った。口上手の斎藤さんに丸められたのが口惜しかったのである。斎藤さんも形勢を察した。即ち時計を出して見て、
「やあ。もう十一時過ぎている。山下君、僕はもう失敬する」
と慌て出したのである。
「まあ、宜いでしょう」
「いや、もう晩い」
「この上勝手を言って、お引き止めも出来ない義理だが、何うだね? もう少時」
「足元の明るい中に。ハッハヽヽヽ」
「それも然うだろうて。ハッハヽヽヽ」
「兎に角、御令息をお渡し申上げましたよ」
「有難う。御好意は忘れない。何れ改めてお礼に上りましょう」
と念使いの山下さんは尚お慎重の調査を必要と認めた。
しかし斎藤さんの口添えは充分の効果があった。山下さんは俊一君の無事な顔を見てから急に気が強くなって、その夜深更まで詮議を続けたが、縁談としては何の点からも申分なかった。
「高等学校時代からの親友ですから、平塚君の家のことなら何でも分っている積りです」