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よめとりむことり
嫁取婿取
佐々木 邦
「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页
しかし一向音沙汰がない。尚お待ち構えているところへ、妹の春子さんが訪ねて来た。
「兄さん、イヨ/\お芽出度いんですってね」
という挨拶だった。井の頭事件以来、実は昼間二度まで様子を訊きに来ている。最初三郎君が見つけたのを母親へ取次いだ丈けに責任を感じているのだった。俊一君は妹の祝意に対して、
「知らん」
と答えた。
「憤っていて?」
「うむ」
「兄さん、私達、心配していたのよ」
と春子さんは訴えるように言った。
「余計なお世話だ」
「兄さん」
「三郎には恨み骨髄に徹している」
「それは御無理よ、兄さん」
「白状しろ」
「何よ? 兄さん」
「自分の心に訊いて見ろって三郎に言ってくれ」
と俊一君が益※(二の字点、1-2-22)激した時、電話がチリン/\鳴り出した。飛びつくようにして、
「はあ/\/\/\」
とやる。斎藤さん到着の知らせだった。
「兄さん」
「ハッハヽヽヽ」
「変な人! 憤ったり笑ったり」
と春子さんが呆れた。
斎藤さんは平塚家の玄関に立って案内を請うた時、取次に出て来た断髪の令嬢を絹子さんと認めた。紹介状と共に刺を通じてから、
「斯う立ち働いているところを見ると、家庭教育が相応行き届いている」