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よめとりむことり
嫁取婿取
佐々木 邦
「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页
俊一君は智恵がなかったと後から思った。実はその前の日曜に三郎君を取っ占めて溜飲を下げたばかりだった。三郎君が安子さんの縁談でやって来た時、
「三郎さん、一寸」
と自分の部屋へ呼び込んで、
「僕は君に訊きたいことがあります。君は僕の義弟ですか? それとも探偵ですか?」
と血相を変えて切り出した。それに対して、三郎君は、
「兄さん、申訳ありません」
と先ずあやまってかゝった。
「…………」
「この間のことは全く僕の誤解でした。以来煩悶しています。何れ御縁談が纒まった上でお詫び申上げたいと思っていました」
「春子からの言伝が届きましたか?」
「はあ」
「これからは悪いことがあったら、直接僕に注意してくれ給え」
「はあ」
「僕は君のお蔭で大変な親不孝をした」
「考えの足らなかった為め、皆さんへ一方ならぬ御迷惑をかけました」
「お互に公明正大にやろう。修身の先生とは思想が違うけれど、誤解をされちゃ詰まらないから、僕もこれから気をつける。安心してくれ給え」
と俊一君は大威張りだった。
その直ぐ次の日曜だから、甚だ具合が悪かった。河岸を更えるのだったと思ったが、今更仕方がない。この際絹子さんにお冠を曲げられると、大変なことになる。