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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「山下君、一寸」

「何ですか?」

「君のところのお子さん達は実に優秀揃いだね」

「何う致しまして」

「僕のところは数でこそ負けないが、粗製濫造だから駄目だ」

「そんなこともありますまい」

「いや。君のところは実に敬服だよ。矢っ張り皆奥さんの遺伝だろう?」

「冗談仰有っちゃいけません」

と山下さんは細君まで褒められた積りで嬉しがる。

しかし他の有価物と異って子供は生身である。苦労をかけること夥しい。山下夫婦は心の休まる間がなかった。未だ皆小さかった頃は、風邪が流行ると順繰りに引いて、結局戸籍面通りに枕が並んだ。痲疹を三人一度にやったこともある。ジフテリヤもやった。何でも一人で済むことは滅多にない。夫人が末男の産褥中長男長女がチブスで入院した時なぞは、山下さん、世の中が悉皆暗くなってしまった。

「あれは利いた。あの後白髪がポツ/\生えて来た」

と未だに言っている。実に能く患ったものである。季節々々の小児病に至っては決して流行に後れることがなかった。

「家の子は何でも屹度魁をするんでございますからね」

と夫人がこぼした。

「いや。時稀殿後を勤めることもあるよ。しかし然ういう時は却って重いから、矢っ張り早くやって貰う方が宜い」