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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「何うだったい?」

と兄さんの俊一君が訊いた時、

「存じませんよ」

と答えた。妹の安子さんがチラリと顔を見て笑った時、凝っと睨みつけた。

「うっかり何か言うと叱られてよ」

と安子さんは芳子さんに警戒した。それ以下の弟妹は物の数でない。縁談のあることを知らずにいた。

お母さんは翌日早速斎藤夫人を訪れた。

「あらまあ、奥さま、これから伺おうと思っていたところでございました」

と斎藤夫人は、成程、支度をしていた。

「何うも恐れ入ります」

「さ。何うぞ」

「は」

と山下夫人は客間へ案内されて、

「先日は態※(二の字点、1-2-22)お出下さいまして、昨日は春子が又……」

とお礼を申述べた。

「奥さま、大分お話が合うようでございますよ」

と斎藤夫人は掻い摘んで報告した。縁談というものは関係して見ると妙に引き込まれて、無暗に纒めたくなる。人間の持っている建設的本能に強く訴える。殊に良縁と信じているから、奥さんは一意専心だった。

「種々と有難うございました」

と山下夫人は安心した。

「仲人って、ナカ/\大変なものね」

「お察し申上げますわ。春子は特別我儘ものでございますから」

「御恩に着せるには未だ早うございますけれど。