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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「それはお約束よ」

「お母さんは?」

「好い人よ。御親切にして下さるわ」

と春子さんも満足している証拠に、月々の三日が二日となり、一日となり、殊に子供が生れてからは百パーセントになり切ってしまって、一向姿を見せないこともある。

長男の俊一君は春子さんの結婚と年を同うして帝大を出た。山下夫婦は一時重荷を下したような気がしたが、以来足かけ三年、次女の安子さんが二十三、三女の芳子さんが二十二、一寸油断している間に又縁談に追いつかれた。

「あなた」

と山下夫人の督促は年が明けてから更に厳しくなった。

「春子も二十三で行ったんだから此年中に片付ければ宜いんだよ」

と山下さんはもう聞かなくても分っている。

「私、今日安子と芳子をつれて銀座へ買物に参りましたのよ」

「ふうん」

「ツク/″\感じましたわ」

「何を?」

「電車の中で余所の奥さん方が目引き袖引きしているじゃありませんか?」

「ふうん」

「ふうんじゃございませんわ」

「何だい? それじゃ」

「安子と芳子を双子と思ったんでございますよ」

「成程。ハッハヽヽ」

「笑いごとじゃございませんわ」

「年子で能く似ているから然う見えるのさ。俺だって間違うことがあるよ」