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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

悪くこじらせれば、それっきりですわ。お前や私から持ち出せば、文句をつけるに定っていますよ」

「でも好いところで安子が行く気になれば宜い筈じゃございませんか?」

「理窟じゃないのよ。意地ですからね」

「そんなに分りませんの?」

「お前のお父さんだけれど、私はもう呆れていますのよ」

「三郎から言わせましょうか?」

「然うね」

「三郎なら信用がありますわ」

「それも言い方一つよ。先方にお金があるなんて言ったら、もう駄目よ」

「むずかしいのね」

「一つ相談しましょう」

とお母さんは策を繞らす時節が来た。

三郎君が訪れたのはその次の日曜だった。尤もその間にお母さんは高円寺へ抜け駈けをして具さに打ち合せたのである。

「お父さま、お母さま、存じながらつい/\御無沙汰申訳もございません。御健勝で何よりに存じます」

と長船君は相変らず角張っている。

「何うだね?」

「お蔭さまで一同頑健に暮して居ります」

「この間春子が坊やを見せに来てくれたよ。大きくなったね」

「はあ、その節は種々と」

「さあ。崩しなさい。洋服は窮屈だ」

「はあ」

「今日は閑だ。ゆっくり話そう」

と山下さんは模範を示して胡坐をかいた。