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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「…………」

「間違ありませんわ」

「…………」

「春子や」

「…………」

「お前、憤ったの?」

「お母さん、私、三郎のことを冷かされると厭な心持になりますよ。兄さんのことを三郎から言われても腹が立ちますけれど」

「三郎さんが兄さんのことを何とか仰有ったの?」

「…………」

「春子や、お前はこの間も私が三郎さんのことを話したら、黙って立ってしまったのね」

「でも、私、茶化されゝば、何うしたって心持が悪くなりますわ」

「茶化したってほどのこともなかったじゃないの?」

「いゝえ」

「内々ですもの」

「幾ら内々でも、聖人だの君子だのってのは反語ですわ。それをお母さんまで好い気になって仰有るんですもの」

「冗談よ」

「兄さんは余りですわ。本当に憎らしいわ」

「何故?」

「先刻も私に『先生は相変らず御機嫌ですか?』って訊きましたの。私、睨んでやったわ」

「お前の目は大きいからね」

「お母さん、直ぐその通りじゃございませんか?」

「オホヽヽヽ」

「厭よ。私、もう」

「むずかしいのね。それじゃこれから気をつけましょう」

とお母さんは賺める外なかった。

「議論に負けて口惜しいものだから、堅人だの何だのって」

「俊一も好くないんですよ」