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こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

「中央公論」1921(大正10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,292 字 · 80 页

青空文庫

短い※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)の下に、更に短い首があって、すぐにいかつい肩へ続いていた――ここの所は敏子そっくりだ、と彼は考えた。然し口へは出さなかった。

「さあ、お父ちゃまに抱っこしてごらんなさい。」と兼子は云って、彼の腕へ子供を渡そうとした。

彼はそれを一寸抱き取って、すぐ下に下した。しなやかな小さな両腕、円っこい弾力性の胴体、それがずっしりとした重みを持って、足だけが妙に軽やかだった。その軽い足で子供は向うに駈けて行こうとした。不安だという気が彼に起った。彼は俄に子供を捉えて、また胸に抱き上げた。子供は軽い足だけをばたばたやった。いつのまにかべそをかいていた。

この小さな存在は、一体俺を何と思ってるのかしら、と彼は心の中で考えみた。然しその考えは、子供の姿と少しもそぐわなかった。彼は考え直した、一体何を考えてるのかしら?――子供は玩具を持って余念なく遊んでいた。畳の上にちょこなんと坐って居た。白いエプロンが胸から真直に垂れて、膝が殆んどなかった。膝の上に物をのせてやっても、一寸身体を動かせばすぐに転げ落ちた。それでも、立ち上ると帯から下がすらりとしでいた。