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がくいについて

学位について

寺田 寅彦

「改造 第十六巻第五号」1934(昭和9)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,656 字 · 17 页

青空文庫

あらを拾えば切りはない。あらはないが何の取り柄もない論文は百あっても学問は進まないであろう。

学位というものは決してやり惜しみをするような勿体ないものでも何んでもないのであってただ関係学科に多少でも貢献するような仕事をなにか一つだけはした人間だという証明書をやるだけのことであって、その人がえらい学者であり何んでも知っているという保証をつける訳でもなんでもないのである。場合によってはむしろ反対にその専門中のある専門以外のことは何も知らないという免状になることすら可能なのである。

学位に関するあらゆる不祥事を無くする唯一の方法は、惜しまず遠慮なく学位を授与することである。一日何人以上はいけないなどという理窟はどこにもない。百人でも千人でも相当なものであれば残らず博士にすればよい。それほど目出度いことはないのである。そうすれば学位に対する世間の迷信も自然に消滅すると同時に学位というものの本当の価値が却って正常に認識されるであろうと思われる。

大学でも卒業した人間なら取ろうと思えばおそらく誰でも取れる学位である。取るまでの辛抱をつづけるかつづけないかの相違で博士と学士の区別が生じる。