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うちゅうのにだいせいりゅう
宇宙の二大星流
寺田 寅彦
「東京朝日新聞」1907(明治40)年12月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,116 字 · 5 页
太陽はまた地球その他の遊星を率いて天の一方リーラ星座に向って突進している。この事を始めて気付いたのは英国のハーシェルという星学者であった。一見動かぬと思われる恒星をよくよく調べてみると実は少しずつ動いている。少しずつと云うのは遠い地球から見て云う事で実は驚くべき速度で動いている、がどの星もみなリーラ星宿から外へ向いて散開しつつあるように見える。これを畢竟するに太陽系がこの星座に向って進んでいるため、丁度船が港に近づく時眼前の景色が目指す埠頭を中心として展開すると同じだと説き、爾来誰も異議を挿むものがなかった。ハーシェルの調べた結果によれば太陽は半時間に一万マイルくらいの速度で飛んでいる、一日たてば四十八万マイルだけ目的地に近寄ってはいるがその行先はあまりに遠い虚空の果で、百年や二百年の短日月では一向近寄ったようにも見えぬのである。
ハーシェルの発見も今は昔となった。近頃和蘭グロニンゲンのカプタイン博士等は、従来多年の観測の結果を綜合して精細な研究を遂げた末に、天体に散布せる諸恒星は自ずから二派の流れに分れている事を発見した、すなわち天体各部の星の運動が目指す方向を反対に延長して見るとほぼ定まった二つの星座に集注する。