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うちゅうせんぺい

宇宙尖兵

海野 十三

「新青年」1943(昭和18)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,974 字 · 72 页

青空文庫

これはリーマン艇長の予期しなかった出来事なのだ。艇長は、そういうことなしに安全に平衡圏を突破できるものと考えていたのだ。どこかに計算のまちがいがあったわけだ。しかし艇長は、こういう場合に処する用意を考えて置いた。今それが始まっている。見たまえ、下の方を。本艇から、いろいろな物を外へ放り出しているのが見えるだろう」

と、魚戸は指を下の方に指した。

僕は欄干につかまって、下方を覗きこんだ。曲面を持った凹レンズ式の展望窓は、本艇の尾部の方を残りなく見ることが出来るようになっていた。尾部には強力なる照明灯が点いていて、昼間のように明るい。見ていると、艇側から、ぽいぽいと函のようなものが放り出される。その函は、マッチ箱ぐらい小さいようにも見えるし、また見ようによっては蜜柑箱よりも、もっと大きいようにも思われる。

「あの函はなんだろう」

「あれは屍体の入った棺桶だ」

「えっ、棺桶。ずいぶん数があるようだが、どうしてあんなに……」

「地球を出発して以来、本艇内には死者が十九名できた。その棺桶だ」

「なぜ放り出すのか。宇宙墓地へ埋葬するためかね」

「それは偶然の出来事だ。本当の意味は、この際、本艇の持っている不要の物品をできるだけ多く外へ投げ出し、引力の場を攪乱して、本艇が平衡点に吸込まれるのを懸命に阻止することにある。