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うのこうじくんをおもう

宇野浩二君を思う

佐藤 春夫

「河北新報」1961(昭和36)年9月25日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,145 字 · 3 页

青空文庫

いやもっと早くわが二十を二つ三つ過ぎたころから、君もわたくしもうずもれて志を得ないころから、わたくしは君がゆたかな才を抱いて、童話などで口すぎをしていたのを聞き知っていた。いやもっと早くお互いの学生時代、君は早稲田、僕は三田と学校は違っていても、銀座あたりの行きずりに君とは早く面識を得ていたらしい。言葉もかわしていたかもしれないがはっきりした記憶はない。何しろ五十年前にさかのぼるのだから。

君はわたしより一年の長で、文壇に出たのは相前後し、お互いに敬愛しながら僕は君を訪うこともしなかったのに、君は二、三度わたくしを訪問してくれた。こうして交わりをはじめたのはわが三十のころ、四十年前の話である。戦後は上田市に疎開していた里見氏に招かれて一夕、別所温泉で三人相はげまして大いに語ったものであった。当日ひどい雷雨で、雷ぎらいの彼はきっと困っているだろうと思ったのに、松本からかけつけた彼は案外元気であった。彼は下戸だから多くの会合では同じく下戸のわたくしと必ず隣り合ってすわった。そうしていつも同車でまず本郷の彼の家へ彼を送ってわたくしはわが家に帰った。車中でもたのしく語ったものであった。