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あんごのしんにほんちり
安吾の新日本地理
03 伊達政宗の城へ乗込む――仙台の巻――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,085 字 · 48 页
クジラというものが大物だから設備なしに処理できないし、たった年に七百頭ぐらいの鯨でも、一ツの鯨専門の港を裕福にうるおすだけの力があるのだね。それに昔ながらの漁港は因習的で暗い。大漁の時はサイフの底をはたいて豪遊し、不漁の時はフンドシまで質に入れても間に合わない救いのない暗さが、街のどこにもしみついているようだ。そういう漁師の因習的なデカダニズムには救いがないね。現実と対応して工夫された新しい生活の設計がどこにもないのだもの。それをロマンチシズムとでも称するのはウソの大ウソというものさ。そこにあるものは無設計、無智、原始、愚昧ということだけだ。
クジラ専門の鮎川には、近代的な大会社の資本がはいって漁法にも運営にも計画された設計があるから、昔ながらの漁港に見られる因習的な暗さがないね。
石巻ときたら、港から町の中心まで、船員相手のキャバレーだのパンパン屋だの、バアだのオデン屋だの待合だらけさ。中には、船員様のためのバア、などと書いたのもあるし、船員御用、船乗の皆さん、どうぞ、などというのもある。私の泊った宿屋では、しきりに石巻の芸者をよぶことをすすめたが、冗談じゃない。