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あんごのしんにほんちり
安吾の新日本地理
07 飛騨・高山の抹殺――中部の巻――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,650 字 · 54 页
しかし、彼は建てなかったかも知れない。
私はこの寺の後の山がどうも気になるので(と申すのは、ヒダの社寺の後にある山の上には古墳らしいのが多いのですよ)そこで寺のうしろの山上にあるアタゴ社のホコラを見物に登りました。一目リョウゼンですよ。ホコラのうしろはヒョウタン型か前方後円か形はハッキリしないが古墳にマチガイありません。たぶんアタゴ社の下を掘ると羨道の入口があるのだろうと思いますよ。
この古墳は、まッすぐ御岳サンと向い合っております。御岳サンの頂上のちかいところにもクラガリ八町という高いガケがきりたった暗い坂があって古来有名だそうですね。千光寺の老樹ウッソウとして昼もなお暗い八町坂とこの点も対になっております。あの山中では日本武尊が遭難しかけていますが、そしてあそこに濁江温泉というのがあって、日本武尊の遭難に合せると、そこにも霊泉を考えてもよろしいのですが、しかしそこまでのコジツケはやめにしても、山岳崇拝が持ち前の宗教だったヒダ人が御岳サンと高貴な人の墳墓をはるかに向い合せに造るのは全くフシギがない。
この寺の縁起の上で開山になっているのがスクナで、本当に寺をたてたのが真如だとすると、廃太子真如ということから考えて、ここがスクナの墓、否、大友皇子、日本武尊らの運命を負うた人の墓と見てよろしいかと思う。