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あんごしたん
安吾史譚
05 勝夢酔
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,002 字 · 27 页
またメンドウなことを云って、シブシブ持って来させた。
能勢の山へのぼり茶屋でカゴから降り、ここより二十五丁の山径を歩いて頂上へ登る。それから裸になって水行をとって妙見さまへ静々と参拝する。御紋服をきているから、他の参拝人は逃げだしてしまった、門の外の茶店でゆっくり休息する。
なかなか雨雲が現れないな。しかし、どうやら現れた。現れなかったら、彼はどうするつもりだったろう。その時はその時の何かの策はあったろうが、とにかく、こういうところは賭というものだ。賭がはずれれば、おのずから天来の打開策にたよるだけだし、すべてこれらの成行きは、偶然のサイコロがどう出ようと、実は彼の腹の底にできている覚悟が支配するものであろう。
六甲山から雨雲が現れてきたから、夢酔は合羽持に向って、
「お前は仕合せ者だな。今に雨が降るから、荷が軽くなるぞ」
「いいえ、たとえ雲がでても雨にはなりません」
百姓一同が異口同音に云う。夢酔はトンチャクなく、
「下のハタゴへ着くまではこの雨を降らせたくないものだな。それ、みなのもの急げ」
と、渋る奴どもムリに急がせる。二十五丁の降り道を急いで、あと三丁という時に本当に大雨が降ってきてドシャ降りになった。