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あんごしたん
安吾史譚
01 天草四郎
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,351 字 · 23 页
なるほど外国の船が近づいてきた。オランダ船であった。ところが救援の軍勢や食糧をおろすどころか、海上から自分たちに向って砲撃しはじめた。
砲撃による実害は少なかったが、救援の異国船と信じて狂喜した籠城軍にとって、その精神に与えたイタデは甚大きわまるものであったろう。
そして天人四郎にすら矢が当るに至って、神をたのむ農民の心はまったく動揺し、戦意は衰えてしまったのである。だが、それまでの戦争ぶりは見事であった。幕府の大軍は甚しく悩まされたのである。しかしそれは黒幕の浪人軍師の手腕かどうかは疑しいものがある。
島原半島の農民は鳥銃で狩猟を業とするものが多く射撃の術に長じていた。彼らがまだ原城へこもらぬうち、一揆を起した当夜に代官所や城へ攻めこんだとき銃庫へなだれこんで多くの銃を奪っているのである。かなり計劃的のようだ。
そして原の廃城に竹矢来で陣をかまえ、当時の武士の戦法からは子供の戦争ごッこにしか見えないような竹矢来を活用し、それと銃とのコンビで、ウンカのような大軍の総攻撃を撃退してしまったのである。
徳川時代の武士の智能や思想がいかに貧困をきわめたものであるかは、この戦争が一番よくそれを説明しているようである。