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あんじゅうこん
安重根
谷 譲次
――十四の場面――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页
張首明は素早く二人を見較べる。
お光 (張首明へ)あら、煙草まだあったわね。
禹徳淳 煙草じゃありませんよ。髪刈りに来たんですよ。
髪を刈っている客 伊藤さんは今度帰ると、満洲太守という位につくんだという評判だよ。
張首明 そうですかね。豪勢なもんさね。それで、なんですかい、ハルビンへおいでになるのは、その瀬踏みってわけでしょうかね。なんだか満鉄の整理に見えるとかって聞きましたが――。
客 そんなこともあるかもしれない。中村とかいう満鉄の総裁が一緒に来るそうだから。
金学甫 (客を済まして)一服おつけなさいまし。
張首明は安重根と禹徳淳へそれとなく注意している。
お光 金ちゃん、お前、朝御飯まだだったね。(張首明へ)あんたも、ちょっと待っていただいてすましちまったらどう?
客 ここへ置きますよ。
代を残して去る。張首明は安重根と禹徳淳に会釈し、お光、金学甫とともに、三人正面のドアから奥へはいる。禹徳淳は、安重根と並んで空き椅子に腰掛けて、しばらく双方ともじっと動かず黙っている。
安重根 (低声に)手紙見たな。
禹徳淳 言って来たとおり調べてある。二十四日の晩の汽車らしい。