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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

禹徳淳 (考えたのち笑い出して)ははははは、おれにまで、ははははは、おれにまでそんな用心をしなくてもいい。

安重根 まったく、考えてみると、お互い下らないことに向気になってたもんさ。こうして外国に出て不自由をしながら、国事だとか言ってみたって始まらないからねえ。同じ苦労するなら、女房や子供を呼んで、すこしでもうまい飯を食わせるように苦労してみる気になったよ――。(笑う)

間が続く、禹徳淳は沈思している。急に憤然と椅子を起つ。

禹徳淳 安君――。

奥に大きな話し声とともに正面のドアがあいて、楊子をくわえた張首明が出て来る。立っている禹徳淳を見て驚く。

張首明 おや、お帰りですか。

禹徳淳 (狼狽して)急な用事を思い出したんです。後で来ます。

張首明 そうですか。どうもすみません。お急ぎじゃないと思って、ちょっと飯をやってたもんだから――。

禹徳淳はじろりと安重根を見て、考えながら出て行く。張首明は再び安重根を刈りはじめる。長い間。

張首明 ははは、飯を食っててお客を逃がしちゃった。しかし、腹が減っちゃあ軍はできませんからね。

安重根 まったく。

張首明 旦那は鎮南浦の方ですね。