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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

長い間。隣室の話声が高まる。廊下の戸があいて、寝台代りの藁蒲団と毛布を担いだ黄瑞露が顔を出す。

黄瑞露 柳さん、ちょっと手を貸して下さいよ。これ――。

安重根は病的に愕く。

黄瑞露 (びっくりして)何ですよ。何をあわててるんです。

安重根 ああ、びっくりした。考えごとをしているところへ不意に開けるもんだから――ああ驚いた。何です。

黄瑞露 ははははは、お前さんどうかしているよ。こっちこそびっくりするじゃないか、ねえ柳さん。床をとって上げようと思って――。

柳麗玉 あら、もうお寝みになったんだろうと思っていましたわ。すみません。

と起って戸口へ行き、黄瑞露に手伝って藁蒲団と毛布を室内に持ち込む。遠くから「コレア・ウラア!」の叫び声が近づいて来る。同時に隣室にもその合唱と足踏みがはじまる。黄瑞露と柳麗玉は一隅の薪の積んである前に寝床を設えている。

黄瑞露 (隣室の騒ぎに眉をひそめて)何でしょうねえ、夜中だというのに――。(柳麗玉へ)今夜は此室で我慢して下さいね。

柳麗玉 どこだって構いませんわ。

黄瑞露 (笑う)そんなどころじゃないんでしょう? 久しぶりですものね。

二人は床を敷き終る。