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あんじゅうこん
安重根
谷 譲次
――十四の場面――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页
李剛先生?(苦笑)先生か。先生は、無論、暗殺そのものに反対さ。
跫音人声など突如隣室の騒ぎが激しくなり、境の扉へぶつかる音がする。
柳麗玉 (隣室に注意して不安げに起つ)安さん! 何でしょう――。
安重根 (熱して)正直のところ、僕は李剛さんを恨んでいる! 憎んでいる! いつだって、ああやって冷静に構えて反対しながら、その反対することによって僕を煽って、僕を使ってあいつを殺させようとしているんだ。解っている。ははは、わかっているよ。
隣室の騒擾が高まって、ドアが開かれそうになる。柳麗玉はドアへ走って背中で押し止めようとする。
柳麗玉 安さん!
安重根 (無関心に)あの人にとって、僕という存在は一個の暗殺用凶器にすぎない。僕にはそれがよくわかる。(力なく)わかっていてどうすることもできないのが、僕は、この自分が、自分であって自分でないような――。(狂的に叫ぶ)あの人に会うと、いつもそうだ。口では極力止めながら、眼では、伊藤を殺せ! 伊藤を殺せ! と僕を――(爆笑)はっはっはっは、なるようになるさ。
柳麗玉 (必死にドアを押えながら)早く外套を脱いで、行李を――。