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あんじゅうこん
安重根
谷 譲次
――十四の場面――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页
まるで一緒に暮らしてきたようなものさ。他人とは思えないよ。(弱々しく笑う)このごろでは、僕が伊藤なんだか、伊藤が僕なんだか――。
柳麗玉 解るわ、その気持ち。
安重根 白状する。僕は伊藤というおやじが嫌いじゃないらしいんだ。きっとあいつのいいところも悪いところも、多少僕に移っているに相違ない。顔まで似て来たんじゃないかという気がする。
柳麗玉 (気を引き立てるように噴飯す)ぷっ、嫌よ、あんなやつに似ちゃあ――。で、どうしようっていうの?
安重根 (間、独語的にゆっくりと)伊藤は現実に僕の頭の中に住んでいる。こうしていても僕は、伊藤のにおいを嗅ぎ、伊藤の声を聞くことができるんだ。いや、おれには伊藤が見える。はっきり伊藤が感じられる!
柳麗玉 (気味悪そうに)安さん! あたし情けなくなるわ。
安重根 (虚ろに)伊藤がおれを占領するか、おれが伊藤を抹殺するか――自衛だ! 自衛手段だ! が、右の半身が左の半身を殺すんだからなあ、こりゃあどのみち自殺行為だよ。
柳麗玉 (うっとりと顔を見上げて)そうやって一生懸命に何か言っている時、安さんは一番綺麗に見えるわね。
安重根 もう駄目だ。