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あんじゅうこん
安重根
谷 譲次
――十四の場面――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页
駅長 なに、ほんの形式ですよ。
安重根 先刻も軍隊のほうから審べが来ました。うるさくて寝られやしません。いったいどうしたというんです。
駅長 (とぼけて)さあ、何ですか、私どもは上司の命令で動いているだけですから――(禹徳淳へ)三人御一緒ですか。
禹徳淳 はい。そうです。
駅長 どちらからおいででした。
禹徳淳 旅の飴屋なんです。ハルビンから来ました。
駅長 これからどちらへ?
禹徳淳 明朝三夾河、寛城子の方へ発つつもりです。
駅長 ありがとう。お邪魔しました。
駅長去る。支那人ボウイは顔をしかめて随いて行く。駅長はただちにドアの真向うの部屋へはいって、同じことを言っているのが聞こえて来る。間。
禹徳淳 (安重根を凝視した後)君はどう考えているか知らんが、僕らは決して個人の挌で(低声に)伊藤を殺っつけるんじゃあないんだ。人数こそ尠いが、この行為は戦争だよ。立派な××戦争だよ。君は義兵の参謀中将として指揮をし、僕はその義軍に参加しているのだ。事成れば、戦時の捕虜として潔く縛に就く覚悟でいる。
安重根 (続けさまに巻煙草を吹かして歩き廻りながら、苦笑)解った、わかった! 僕も今さらこんなことを言いたくはないが、本国では、外部も工部も法部も、いや、通信機関まですべて日本の経営なんだぜ。