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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页
天皇は、これを殊の外ご賞美遊ばされたと言う。かつて久我家が縁家から海老を贈られたのでこれを内献申しあげたところ、天皇はいとも、ご満足に思召された。そして、間もなく、
『再びこれを得たらんには、割愛を望む』
との、ご宸翰を賜わったほどであった。
また、水戸家であったか、毛利侯であったか、ある時、塩鮭を伝献申しあげた。主上には、
『これは美味である』
と、仰せられてご賞味遊ばされた。ご食事が済み、近侍の稚児が御膳を運び去ろうとした時、御膳の上に、残り鮭の一片があったのをご覧ぜられて、
『これを棄ててはならぬ。朕は晩酌の佳肴とするつもりである』
と、お命じ遊ばされたそうである。嘉永二年十月のことである。
また、御製を遊ばされた折り、料紙を召された事がある。ところが、宮中にはその時もう一枚の短冊すらなくなっていた。侍従岩倉具視は、このありさまを見て大いに悲しみ、その夜ひそかに時の所司代本多美濃守忠民の邸へ行って言うに、『こん日、主上が短冊を召されたが、その蓄えがない。それほど、宮中は窮乏に陥っているのだ。一天万乘の君が一片の短冊にも、こと欠き給うことは、一体誰の過失であろうか。