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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页

青空文庫

あれこれ考えると、何としても不安でならぬ。けれど、縁は異なもので案ずるより生むがやすい、ということになるかも知れない、などとたかをくくってみたりした。

――双方に自惚れがなく、己れを知っている人達ならば、万歳だ――と、考えた。

見合いの場所は両国駅の入口、時間は午前十一時。森山兄弟の方が先に駅の入口のところに揃って待っているから、こちらは山岡を連れて揃って行く。そこから四人打ち揃って、どこかへ昼餐を食べに行こうという手筈になったのである。

約束の日は、土用に入る前のかんかんと照る焼きつくような暑い日であった。山岡は、例のモーニングを着用し、髭も剃りネクタイも新しいのを結んで出てきた。二人は、円タクに乗って両国駅の前の曲がり角まで行って降りた。

私は、遠くから駅の入口の人混みのなかを物色した。いる、いる、兄妹二人で、駅前の庭の方を人待ち顔に眺めている。

『いるか』

と、山岡は及び腰できくのだ。

『いる。あすこに二人で待っているが、ここではまだ君には分からない』

山岡と私の二人は、緩やかに駅の入口の方へ歩いて行った。十五、六間前まで近寄ると、兄妹二人の眼は動揺した風である。