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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
佐藤垢石『完本 たぬき汁』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たぬき汁、『七面鳥』と『忘れ褌』、海豚と河豚、うむどん、縁談、議会見物、採峰徘菌愚、酒渇記、酒徒漂泊、すっぽん、増上寺物語、淡紫裳、探巣遅日、盗難、濁酒を恋う、にらみ鯛 、春宵因縁談、姫柚子の讃、美音会、みやこ鳥。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 页
であるのに、少し肩の骨がゆるんだような気がしているのと、正面の襖が左に回転しかけて、また元の位置へ戻る運動を続けはじめたくらいで、別段苦しくも何ともない。いい気持ちである。
――さすがに、俺は父の子である――
と、思った。生まれてはじめて口にした酒を、正味三合ぺろりと酌んでしまったのには我れながら驚く。しかも、飲み抜けていま酔態を演じているとも考えぬ。
――俺は、酒の天才かな――
ひそかに、こんなことを感ずる。それから女中を呼んで、飯を盛らせて静かに食べた。
四
酒の天才など、何の役にもたたない。とうとう私の一生は、酒のために祟られてしまった。
『本朝二十四孝』八人の猩々講に――波の鼓の色もよく、長崎の湊にして猩々講を結び、椙村のうちに松尾大明神を勧請中、甘口辛口二つの壺をならべ、名のある八人の大上戸爰に集まる。大蛇の甚三郎、酒呑童子の勘内、和東坡の藤助、常夢の森右衛門、三人機嫌の四平、鈎掛升の六之進、早意の久左衛門、九日の菊兵衛この者共の参会、元日より大年まで酔の覚めたる時もなく、いつとても千秋楽は酒のみかかる時うたうて仕舞、兎角正気のあるうちは、身を酒瓶の底にしづめ、万上のたのしみ是にきはめける――