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ほうえいふんか

宝永噴火

岡本 かの子

「文学界」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,505 字 · 62 页

青空文庫

その習慣が伝わって、後世の夏安居になったという。禅が日本へ渡ると共にその風習も伝わって禅寺の主な年中行事の一つになっている。夏の九十日間は雲水達はどこかの寺の道場に宿りを求め静に座禅工夫にいそしむのであった。

慧鶴も朋輩十二人と一緒に僧堂に入って座禅に努めたが慧鶴はよい便宜とばかりに熱心に掟通り行い澄したが、外の朋輩はそうは行かなかった。橘屋の娘の手紙以来いよいよ慧鶴との間が面白くなくなって来た朋輩たちは今度は積極的に敵対の態度に出て、事の端にも慧鶴の邪魔をした。慧鶴はよく堪えて辛抱したので彼等は張合いが無くなった。そうなると彼等は慧鶴に対する憎しみを馬翁の上に移して、しきりに馬翁に対する不平を云った。慧鶴が橘屋の娘のことで馬翁に呼びつけられたことは確かであるけれど、どう双方の話がついたものか慧鶴の様子は一向変らない。これは馬翁に依怙ひいきがあるからで、師匠としても許しがたい振舞いである。

それやこれや平常かんぺきの強い師匠への不平が不平を生んで月も七月に入って安居の終りの日が来たのをよい機会に彼等は暇を取り揃って寺を出て行った。

慧鶴は寺にたった一人馬翁と一緒に残った。