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ほうせきしょう

宝石商

小川 未明

「現代」1921(大正10)年5月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,265 字 · 11 页

青空文庫

また、紺碧の海は、黒みを含んでいます。そして高い波が絶えず岸に打ち寄せているのでありました。

宝石商は、今日はここの港、明日は、かしこの町というふうに歩きまわって、その町の石や、貝や、金属などを商っている店に立ち寄っては、珍しい品が見つからないものかと目をさらにして選り分けていたのであります。

火の見やぐらの立っている町もありました。また、荷馬車がガラガラと夕暮れ方、浜の方へ帰ってゆくのにも出あいました。

男は、珍しい品が見つかると、心の中では飛びたつほどにうれしがりましたが、けっしてそのことを顔色には現しませんでした。かえって、口先では、

「こんなものは、いくらもある、つまらない石じゃないか。」といって、くさしたのです。

店のものは、よく知りませんから、そうかと思いましたが、めったに見たことのない、珍しい美しい石だと思っていますものですから、

「そんなことはありますまい。私どもは、長年石を探して歩いていますが、こういう珍しい石はこれまで、あまり手に入れたことがないのです。」と、店のものは答えました。

すると、智慧のある宝石商は、わざと嘲笑いました。