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ほうせきしょう
宝石商
小川 未明
「現代」1921(大正10)年5月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,265 字 · 11 页
「それは、おまえさんが、あまり世間を知らんからだ。この山を越えて、もっと遠い、遠い国の方までいってみれば、こんな石は、けっして珍しくない。もっと美しい石がいくらもあります。」
と、旅の宝石商はいいました。
店のものは、それはそうかもしれないと思いました。そして、赤い石や、青い石や、また海の底から取れた緑色の石や、山から取れた紫色の石などを安くその男に売ってしまったのです。
どこへいっても、その男は、口先が上手でありました。そして、珍しい石をたくさん集めました。彼は、それを持って南の国へいって高く売ることを考えると楽しみでなりませんでした。それには、すこしでもたくさん持ってゆくほうがもうかりますから、男は、根気よく寂しい北国の町々を歩いていました。
そのうちに秋もふけて、冬になりました。寒くなると男は、早く南の国へゆくことを急ぎました。
ある日のこと、ものすごい波の音を後方に聞きつつ宝石商は、さびしい野原を歩いていますと、空から雪がちらちらと降ってきました。
「雪が降ってきたな。」と思って、男はいっしょうけんめいに路を急ぎました。けれどいつまでたっても、人家のあるところへは出ませんでした。